生命保険の死亡保険金受取人は、配偶者が指定されるケースが大半です。今は離婚する人も多く、離婚した元夫や前妻がそのまま受取人になっているケースも少なくありません。
離婚して赤の他人となった元配偶者が受取人のままだと、いくつかの不都合な点もあります。
この記事では、生命保険の保険金受取人が離婚した元夫や前妻のままだと、どのような問題があるのか、税金面を中心にくわしく解説していきます。
死亡保険金受取人として指定できる範囲
生命保険の死亡保険金受取人として指定できる範囲は、2親等以内が一般的です。2親等以内に当てはまるのは、配偶者・子ども・両親・兄弟姉妹・祖父母・孫です。
離婚して別れた元夫や前妻は2親等以内ではないので、通常は死亡保険金受取人に指定できません。
しかし、離婚前から受取人となっていて、離婚後も受取人も変更をしていなければ、法定相続人でない元夫や前妻でも死亡保険金受取人として保険金を受け取ることができます。
元夫や前妻が受け取る死亡保険金は相続税の対象
被保険者と保険料負担者が同一の場合であれば、元夫や前妻が受け取る死亡保険金は、「みなし相続財産」として相続税の課税対象です。
元夫や前妻は法定相続人ではありませんが、「遺贈」により相続をすることになります。
「遺贈」とは、遺言によって相続人以外に相続させることです。死亡保険金受取人に指定されていることで、遺言があったのと同じ扱いになるのです。
法定相続人ではない元夫や前妻は生命保険の非課税枠適用外
生命保険の死亡保険金には、非課税枠が設けられています。死亡保険金には、残された家族の生活保障目的があるため優遇されているのです。
死亡保険金の非課税枠は、次の式で計算できます。
妻1人子ども3人であれば法定相続人は4人なので、2,000万円までの死亡保険金は非課税で受け取れます。しかし、当然のことながら元夫や前妻はすでに赤の他人で、法定相続人ではないので生命保険の非課税枠は適用外となり、死亡保険金全額が課税対象です。
元夫や前妻が支払う相続税額は2割増
被相続人(亡くなった人)の配偶者と1親等以内の血族以外の人が相続するときの相続税額は、2割相当が加算されるように決められています。
離婚した元夫や前妻は、配偶者でも1親等以内の血族でもないので、相続税額は2割増しとなってしまいます。
相続人とのトラブルに発展する可能性がある
死亡保険金受取人が離婚した元夫や前妻だと、相続時にトラブルになる可能性があります。トラブルまでいかなくても、嫌な思いや気まずさを感じる可能性はかなり高いです。
なぜなら、被相続人(亡くなった人)の法定相続人とのやり取りが求められるからです。
相続税額の計算のためには法定相続人とのやり取りが必要
元夫や前妻が受け取る死亡保険金は課税遺産総額に含まれます。そのため死亡保険金を受け取る元夫や前妻の相続税額を計算するには、被相続人(亡くなった人)の課税遺産を知る必要があり、その法定相続人とのやり取りが必要不可欠です。
被相続人が再婚している場合は、その配偶者とコンタクトを取るのですが、お互いにとって気分のいいものではないでしょう。
法廷相続人の相続税が増える可能性がある
さらに困ったことに、元夫や前妻が受け取る死亡保険金は課税遺産総額に含まれることで、法定相続人の相続税の負担が増える可能性があります。
法定相続人からしてみれば、元夫や前妻が死亡保険金を受け取ることも気に入らないのに、そのせいで自分が支払う相続税額まで増えてしまうのは受け入れがたいはずです。こういったことが原因となって、トラブルに発展することも考えられます。
しかし、それを嫌って放置しておくと、のちのち追徴課税になる可能性もあるので、避けることはできません。
元夫や前妻が受取人だと生命保険料控除も対象外になる
生命保険の死亡保険金受取人が元夫や前妻のままだと、生命保険の大きなメリットである生命保険料控除が対象外となってしまいます。
死亡保険の生命保険料控除の条件は、「保険金受取人が、契約者またはその配偶者・その他の親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)である」ことです。
離婚した元夫や前妻は赤の他人になってしまっているので、生命保険料控除の条件からも外れてしまいます。
元夫や前妻が保険金受取人だとデメリットが多い
死亡保険金受取人を元夫や前妻のままにしておくと、税金面で優遇されず、その他の面でもデメリットが多いので、おすすめできません。
離婚するときに小さな子どもがいて、その子どものために死亡保険に入っているのなら、保険金受取人は子ども本人にしておいた方がいいでしょう。離婚して親権が無くても、実子であれば法定相続人です。法定相続人であれば、夫婦の離婚後であっても税金面での優遇は受けられます。
人生の節目では生命保険の見直し相談をするべき!
結婚や離婚などの人生の節目は、生命保険の見直しのタイミングです。
自分で色々と考えていても、生命保険の受取人までは気が回らずに見落としがちです。税金面での不利に気付かないこともあるでしょう。
そのちょっとしたことが、のちのちの大きなトラブルになったり、予想外の損失になったりします。「こんなはずではなかった」とならないように、人生の節目ではお金のプロであるファイナンシャルプランナーと相談し、注意点を確認しておくことがおすすめです。
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