日本には生活保護制度があるので、生活に困窮したときには生活保護を受けることができます。生活保護の受給者は200万人近くいて、これは約60人に1人の割合です。
生活保護を受けると、ぜいたくな暮らしをすることはできないのですが、生命保険に加入していてもいいのでしょうか。
この記事では、生活保護を受けるときの生命保険について、ファイナンシャルプランナーの私がくわしく解説していきます。
生活保護とは
生活保護とは、生活に困窮している人々の最低限度の生活を保障するセーフティーネットです。
生活保護の申請は、住んでいる地域の福祉事務所で行います。日本国内に住む日本人だけでなく、永住権を持っている国内の外国人も生活保護の対象です。
生活保護の受給が認められると、食費や光熱費、家賃や学用品の費用などの様々な扶助を受けることができます。
生活保護の受給要件
生活保護は誰でも受けられるわけではなく、受給するための条件があります。生活保護の受給要件は次の4つです。
世帯収入が最低生活費以下
生活保護を受けるためには、世帯収入が最低生活費よりも少ないことが必要です。職に就いていても、収入が最低生活費以下であれば、生活保護を受けることはできます。
最低生活費というのは、住んでいる地域や世帯の人数などによって異なりますが、東京都内の一人暮らしであれば13万円です。
家族や親族からの支援が受けられない
生活保護を受ける前に、まずは別世帯の家族や親族から援助を受けるように求められます。
国に頼る前に、まずは身内で助けられないかを確認する扶養調査が行われます。扶養調査の対象は、扶養義務者である3親等以内の直系血族です。扶養義務者といっても、扶養しなければいけない法的な義務はないため、支援を断られるケースがほとんどのようです。
家族や身内から援助を受けられる人は、生活保護を受けることはできません。
売却できる資産や預貯金がない
不動産や車などの資産がある場合、基本的にはそれらを売却して生活することが求められます。宝石やブランド品、高級な装飾品も売却が必要です。株や債券などの金融商品も売却が求められ、貯蓄型の保険も解約しなければなりません。
預貯金は最低生活費の半額くらいまでは認められますが、それ以上の場合は生活保護を申請する前に預貯金で生活するように指導されます。なお、自分が住む住宅に関しては、条件を満たせば所有し続けることも可能です。
病気やケガなどで働けない
病気や障害やケガもなく健康な人は、生活保護を受ける前に仕事をするように求められます。
生活保護の財源は、国民の税金です。健康だけど仕事がイヤで働きたくないから生活保護を受けたいというのは認められません。
原則的には生活保護を受けると生命保険はNG
生活保護を受ける場合、原則として生命保険は解約が必要です。
生命保険は資産とみなされます。国民の税金が原資である生活保護を受けながら、生命保険で資産形成をすることは不公平になるからです。
また、貯蓄型の生命保険であれば、生活保護を受ける前に解約払戻金を生活に充てるように求められます。
生命保険を隠して継続したらどうなる?
生命保険があることを隠して継続しながら、生活保護を受給したらどうなるのでしょうか。
これは資産を隠していることになるので、生活保護の不正受給となります。不正受給はもちろん犯罪です。
不正受給がばれると、生活保護は打ち切られ、不正受給した生活保護費の返還を求められます。さらに、悪質だと判断されれば刑事告訴される可能性もあります。
もう一度言いますが、生活保護の不正受給は犯罪です。国民の税金をだまし取る行為です。絶対にやめましょう。
生活保護受給時でも解約せずに継続できる保険もある
原則として、生活保護を受けるには生命保険の解約が必要です。
しかし、一部例外として、解約せずに継続が認められる生命保険もあります。
生活保護受給時に継続が認められる生命保険
貯蓄型ではない生命保険
貯蓄性の高い終身保険や養老保険は間違いなく解約するように言われますが、掛け捨てタイプまたは解約払戻金が少額の生命保険は、継続を認められる可能性があります。解約払戻金が少額かどうかは、最低生活費の3ヶ月分以下が目安です。
保険料が安い生命保険
保険料も安くないと継続は認められません。「安い」の判断は自治体によって差がありますが、最低生活費の10%程度が保険料の上限の目安です。
保険金や給付金を受け取ったら申告が必要
生活保護の受給中に、生命保険の保険金や給付金を受け取ったり、解約払戻金も受け取ったりしたときには、それらを収入として福祉事務所へ申告をしなければなりません。
この申告を怠ると、生活保護の不正受給となってしまうので、注意しましょう。
生活保護を受けなくてもいいように家計を見直そう
生活保護を受けると、車を持てなかったり保険に入れなかったりと、いくつかの制限があります。生活保護は必要なセーフティーネットではありますが、できることなら利用しないで生活したいものです。
とはいえ、人生はいつ何が起こるのか分かりません。急な病気やケガで収入がなくなってしまう可能性もあります。
そのようなことがあっても、すぐに困ることのないように、今から家計を見直して備えておくことが重要です。お金と保険のプロであるファイナンシャルプランナーの力を借りて、耐久力のある家計を作り上げていきましょう。
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