生命保険は契約者の名義を変更することができます。しかし、その場合に税金はどうなるのでしょうか。
この記事では、生命保険を契約者変更した場合の税金について解説していきます。
基本的には契約者変更の時点で税金はかからない
生命保険の契約者変更をしても、その時点で税金がかかることはほとんどありません。基本的には、課税されるのは保険金や払戻金を受け取ったときです。
一部例外もあるので、それはあとで説明します。
契約者変更した生命保険の解約払戻金には贈与税がかかることがある
契約者変更をした生命保険を解約して払戻金を受け取るケースでは、解約払戻金に対して贈与税がかかることがあります。ただし、その全額が贈与税の対象になるわけではありません。
次のケースで解説していきます。
契約者(保険料負担者):契約から8年間は父→2年前に子に変更
被保険者:子
既払込保険料:100万円(父80万円、子20万円)
解約払戻金:50万円
このケースで贈与税の対象となるのは、解約払戻金50万円ではありません。
既払込保険料の8割を父親が負担していますので、解約払戻金50万円の8割である40万円が贈与の対象です。
しかし、贈与税には年110万円の基礎控除があるため、この年に他に70万円超の贈与がなければ、贈与税はかかりません。
解約払戻金の残りの10万円は子が負担した分なので所得税の対象ですが、そもそも子が負担した保険料の20万円を下回っていますのでこちらも税金はかかりません。
契約者変更した生命保険の保険金の税金
次は、契約者変更をした生命保険の保険金や満期金を受け取るケースです。解約払戻金のときは贈与税でしたが、保険金や満期金の場合は受取人によって税金の種類が変わってきます。
次のケースで解説していきます。
契約者(保険料負担者):契約から7年間は父→3年前に子に変更
被保険者:父
保険金受取人:子
既払込保険料:100万円(父70万円、子30万円)
死亡保険金:300万円
このケースでも解約払戻金のときと同様に、契約者の変更前と変更後で分けて考えることが必要です。
契約当初は父親が契約者で保険料を負担していましたので、この部分の保険金は相続税の対象になります。父親が支払ったのは既払込保険料の7割ですので、死亡保険金の7割である210万円は相続税の対象です。
死亡保険金の残り3割にあたる90万円は子が保険料を負担した分です。子が保険料を払って自分で受け取る保険金は、所得税の対象になります。
保険金90万円から子が支払った保険料30万円を引いた残りの60万円が所得税のうちの一時所得の課税対象です。
一時所得は50万円を差し引いた金額の2分の1が、他の所得と合算されて課税されます。今回のケースでその同じ年に他の一時所得がなければ、60万円から50万円を差し引いた10万円をさらに2分の1にした5万円が、他の所得と合算されて課税されることになります。
過去の契約者変更を隠しても税務署にはバレる
生命保険の保険金に課税される税金は、相続税、所得税、贈与税がありますが、相続税は税額が安くなり、贈与税は税額が安くなるのが一般的です。
ケースによっては、過去の契約者変更を隠した方が税金は安くなることもありますが、それは絶対にやめましょう。
保険会社は平成30年以降の契約者変更について、「保険契約者等の異動に関する調書」というものを税務署に送っています。
契約者変更についてごまかしてもたいていはバレますし、バレなかったとしてもそれは脱税です。少額であったとしても脱税は罪ですし、納めるべき税金を納めないことは国民からお金を盗んでいるのと同じことです。
バレたらどうしようとビクビクする人生もつまらないですから、隠さず正直に申告しましょう。
契約者の死亡によって契約者を変更する場合は変更時に相続税の対象
基本的に契約者変更をした時点で税金はかかりませんが、例外もあります。それは、契約者が亡くなって契約者変更をするパターンです。
契約者が亡くなって契約者変更をした場合、新契約者はその保険を相続したことになるため、そのときの解約払戻金相当額が相続税の対象になります。
ただし、このように亡くなった保険契約者から保険を相続した場合、保険金や払戻金などの受取時の税金は、前保険契約者が支払った保険料も現契約者が負担したものとして考えます。
契約者変更の際はプロのアドバイスを忘れずに
契約者変更は比較的簡単な手続きですが、安易に変更すると税金面で損をしてしまう可能性があります。契約者変更時には課税されないため税金のことまで頭が回らないかもしれませんが、よく考えないと受取時に後悔することになりかねません。
そんな後悔をしないためにも、契約者変更をするときにはプロからのアドバイスをもらうことがおすすめです。自分では気づかない点についても、教えてもらえるかもしれません。
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