生命保険は契約を申し込むとき、給付請求するとき、名義や受取人を変更するときも、自署で手続きを行います。自署とは、自分で氏名を書くことです。
他者が記入する代筆は禁止されていますが、もし代筆で手続きを行ったらどうなるのでしょうか。
この記事では、生命保険の手続きで代筆がバレるとどうなるのかを解説していきます。
以前は代筆が普通に行われていた
かつての生命保険業界では、ご主人が職場で奥様の生命保険を契約したり、逆に家で奥様がご主人の生命保険を勝手に契約したりすることが普通に行われていたようです。
職場にいない奥様の自署はもらえないので、代わりにご主人が記入したり、場合によっては保険募集人が記入したり。保険募集人によっては、まるでハンコ屋さんのように様々な名字の印鑑を持ち歩いている人までいたようです。
今では考えられないことですが、当時はそういう時代でした。当時も代筆は禁止されていたでしょうし、保険会社も認めはしないでしょうが、きっと暗黙の了解のようなものがあったのでしょう。
しかし、コンプライアンスが厳しい今の時代にこのような代筆を行ってしまうと、大きな問題になってしまいます。
保険の手続きは自署が基本
保険にかぎった話ではありませんが、書面での契約や申し込み手続きは自署が基本です。
自署とは自分で氏名を書くことですが、それは自分が同意したことを意味する意思表示にもなります。
日本はハンコ社会ですが、脱ハンコの流れもあって、最近では保険会社も印鑑レスでの申し込みや各種手続きができるようになってきています。このような流れの中で、自署はより重要なものになっています。
代筆が禁止されている理由
自署は同意の意志表明ですから、本人が記入しないと意味がありません。自署欄を他人が代筆してしまうと、後になって「自分はそんなことに同意していない」と言われてしまう可能性があります。
また、保険商品によっては詐欺や犯罪、マネーロンダリングに利用されるかもしれません。
これは保険会社にとって大きなリスクですから、絶対に避けたいことです。そのため現在では、代筆を禁止し、自署を徹底するようにしています。
誰の自署が必要?
保険の契約では、保険契約者、被保険者が自署します。
保険料の支払い方法が口座引き落としであれば、口座名義人の自署も必要です。まれに親権者や後見人の自署が求められることもあります。
特に気を付けたいのは告知書です。告知書の記入は自署欄も含めてすべて被保険者が行います。告知書での代筆があると告知義務違反の疑いも出てくるので、告知書は必ず被保険者が記入しましょう。
被保険者が子どもの場合
まだ字を書くことができない子どもが被保険者になることもあります。一般的に、その場合は親権者が代筆をします。
親権者の代筆が認められる子どもの年齢は、保険会社によって規定が異なるので、記入する前にしっかり確認することが必要です。
代筆がバレる理由
代筆がバレる理由として多いのが、保険会社のチェックによっての発覚です。
代筆はのちのちの問題になりかねないため、保険会社は代筆がないか書類をチェックしています。保険会社が全員の筆跡を把握しているわけはないので、チェックするのは他者の筆跡や過去に提出した書類です。
たとえば、保険契約者と被保険者が異なるのに筆跡が同じでないか、以前に申し込んだ他の保険の申込書と筆跡が違っていないかをチェックされます。保険募集人の筆跡と同じでないかをチェックされることもあります。
他にあるのが、保険契約者や被保険者からの申し出により代筆がバレるケースです。自分の知らないうちに家族が契約していて、保険会社にクレームのような形で連絡が入り、代筆が発覚することもあります。
代筆がバレるとどうなる?
代筆が行われていたことが発覚すると、保険会社はその経緯や原因を究明します。その結果によって、その後どうなるかはケースバイケースです。
書類提出時に代筆がバレるケースだと、書類の再提出を求められることがあります。この場合は、申込書だと責任開始が遅れたり、契約年齢が上がってしまったりするリスクがあります。
給付請求時に過去の申込時の代筆がバレると、告知義務違反を疑われるかもしれません。告知義務違反が認められると、最悪の場合は保険契約の解除です。
代筆に保険募集人が絡んでいる場合は、何らかの処分が下されます。悪質な場合は、保険募集人の資格がはく奪されることもあります。
病気やケガで字が書けないときはどうしたらいい?
それでは、病気やケガで字が書けないときは、どうしたらいいのでしょうか。その場合は保険会社に相談してみましょう。事情によっては、代筆を認められることがあります。
保険会社から許可をもらわず、自分で勝手に判断して代筆をすることはNGです。
代筆は違法でリスクが高いので絶対にやめよう
代筆をしていいことは何もありません。
申込時に代筆がバレずに契約できたとしても、何かあったときに給付金や保険金が出ないのでは、生命保険に入る意味がありません。そんなリスクを抱えながら保険を掛け続けるのなら、代筆をせずにしっかり自署で申し込んだ方が安心です。
もし、保険募集人が代筆を勧めたり認めたりする人であれば、その人を信頼することはできないので、担当を変えてもらった方がいいでしょう。
生命保険を代筆で申し込んだことで、裁判に至ったケースもあります。代筆をして得することは何1つないので、絶対にやめましょう。
コメント