配偶者の扶養に入って税金や社会保険料を抑えている人も多くいますが、生命保険の保険金を受け取ったときに扶養から外れないかと心配になったことはありませんか。保険金を受け取って扶養から外れるとしたら、収入を扶養の範囲内に抑えてきた努力も水の泡です。
この記事では、生命保険の保険金と扶養の関係について解説していきます。
そもそも扶養の範囲内って何?
日本の税制には扶養控除というものがあります。細かいことは気にせずにざっくり言うと、年間所得が48万円以下で生計を一にする16歳以上の親族がいるときに、1人当たり38万円を控除するのが扶養控除です。
この年間所得48万円以下は、パートやアルバイトなどの給与所得のみだと年収103万円以下が該当します。配偶者の場合は扶養控除ではなく配偶者控除になるのですが、扶養の範囲内というのは年収103万円以下(税法上の扶養)を配偶者も含めて指すことが多いようです。
ちなみに、よく言われる130万円の壁というのは、社会保険の扶養から外れるラインです。給与所得者で年収130万円を超えると社会保険の扶養からも外れてしまいます。
*この記事では、税法上の扶養である年間所得48万円以下(年収103万円以下)の方を扶養の範囲として解説していきます。
保険金に所得税がかかるケースでは扶養から外れるケースも
生命保険の保険金を受け取ったときに扶養はどうなるかというと、外れるケースと外れないケースの両方があります。
保険の種類や、契約者(保険料負担者)・被保険者・受取人の関係によって課税される税金は異なります。死亡保険の保険金にかかる税金は次の表のようになります。
契約者 | 被保険者 | 受取人 | 税の種類 |
夫 | 夫 | 妻or子 | 相続税 |
夫 | 妻 | 夫 | 所得税 |
夫 | 妻 | 子 | 贈与税 |
保険金が非課税のときはもちろん、相続税や贈与税が課せられるときは年間所得に影響はないため、扶養から外れることはありません。
扶養が外れる可能性があるのは、保険金に所得税がかかるケースです。死亡保険の場合は、契約者と受取人が同一のケースになります。
ただ、保険金に所得税がかかっても必ず扶養から外れるわけではありません。扶養から外れるのは、受け取った保険金により他の収入との合計の年間所得が48万円を超えたときのみです。
扶養から外れるのは保険金額いくらから?
では、いくら保険金をもらったら扶養から外れるのでしょうか。実は、扶養から外れるかどうかは保険金額では判断できません。
1億円の保険金を受け取っても扶養から外れないことがあれば、100万円の保険金でも扶養から外れることもあります。保険金額がそのまま所得になるわけではないからです。
死亡保険だと契約者と受取人が同一のときに所得税がかかりますが、保険金を一括で受け取る場合は一時所得の対象となります。
一時所得の計算式は次のようになっています。
受け取った保険金額から支払った保険料を差し引きますので、つまり儲かった金額から一時所得の特別控除50万円を引いた額が一時所得の金額です。この一時所得の金額の2分の1が他の所得と合算して課税されます。
例として、次のケースの一時所得を計算してみます。
被保険者:妻の父
受取人:妻
保険金額:200万円
これまでに支払った保険料:80万円
一時所得の金額=保険金額200万円-支払った保険料80万円-50万円(特別控除額)=70万円
この70万円に2分の1を掛けた金額である35万円が他の所得と合算され、年間所得が48万円を超えると扶養から外れることになります。
妻が専業主婦で他に全く所得がなければ扶養から外れることはありませんが、パートやアルバイトによる給与所得などと合算した年間所得が48万円を超えると扶養から外れてしまいます。
*配偶者の場合は年間所得が48万円を超えて配偶者控除を受けられなくなっても、配偶者特別控除を受けられる可能性があります。
なお、個人年金保険や収入保障保険のように満期金や保険金を年金で受け取る場合は、一時所得ではなく雑所得の対象です。雑所得も一時所得と同じように、年金額から必要経費(支払った保険料)を差し引いて計算します。
一定の所得額を超えると確定申告が必要
一時所得(2分の1を掛けた金額)や雑所得の合計額が年間48万円を超える(給与所得者の場合は給与所得以外の所得が年間20万円を超える)場合は、確定申告をする必要があります。
パートなどをしていて勤務先で年末調整をしている人も、一時所得や雑所得に対する所得税は納めていませんので、必ず確定申告をしなければなりません。
お金のプロに相談を
保険金や税金にかぎらず、お金のことで分からないことがあったり、困ったりしたときには専門家に相談するのがおすすめです。
保険のことは保険会社や保険代理店、税金のことは税務署や税理士に尋ねることができますが、彼らは専門分野以外のことに関してはよく知らないケースが多いです。お金全般に関する相談であれば、お金のプロであるファイナンシャルプランナーと相談するのがいいでしょう。
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